東西南北七並べ

すき焼き

「和香様の座する世界」感想

 

どうも。田中ロミオ氏大好きオタクです。

和香様の座する世界をようやくコンプしました。
ロミオ節が炸裂している都がただただ可愛く、定価の半分までなら都にブチコできます。
ボウガンノルマクリア達成~もう一回放てるドン!

 

それはそれとして、田中ロミオ氏の新作でありつつも、タカヒロとのタッグでみなとそふとレーベルという不安に塗れた本作でしたが、概ねその不安が的中したといえる出来でした。一般に作品を構成するテーマ、世界観、キャラクター、そしてシナリオの全てに問題があるなぁと。あるいはそもそも一部を除いた妖怪たちの立ち絵が影のみであったり、Hシーンの導入が真っ暗だったりと未完成をうかがわせる部分もある。サブヒロインのHシーンが別冊扱いだったのもあぁ、シナリオに組み込む余裕がなかったのかといった印象。

例えばキャラクター。
和香様、瑠々葉様、遼河、天照に関しては掘り下げと設定がきっちり作中でなされています。伏線も回収され、キャラも立ち、見せ場があり、ああ良いキャラだなぁとめでたくなります。神話をもとにした世界観と、世界観そのものに仕掛けられた設定がキャラと上手くリンクし、各々の神話も深く掘り下げられたうえでキャラと掛け合わされているあたりロミオ氏の成せる技という感じです。他の神々も、単なる善悪ではなく超越した視点から描かれていてリアルでした。あとお銀と都。優遇されてます。ロリコンは病気ですといったな?あれは嘘だ。
と、ここまでは良いんですよ。
けれどもその他のキャラは良くて機能、脚本の都合で用意されたキャラという印象が強い。おに君とかいらなかったでしょ。何のために存在したのか全く分からない。
鬼たちやNKK、百鬼夜行会、藤子なんかもストーリーを進めるうえでの歯車を脱していないと感じました。尺不足なのか、そもそも~編をやる必要があったのかみたいなところですけど。
一方で物語の構造は氏の過去作を思わせる部分も少なくなく。
身寄りのない物たちが集まって暮らしを作るのは「家族計画」であるし、世界の記録と編纂という要素は「最果てのイマ」的であると言える。CVも氏の作品ではおなじみの面子が多く、飲食店の店長が子安氏あたりなんかは明らかに狙ってやっていて良い。そう言った部分をファンサービスとみるか使いまわしとみるかは後世の研究に任せるとして(ドラマCDネタ)

ロミオ氏が得意とするブラックでシニカルな空気感はまるでなく、かといって「おたく☆まっしぐら」のようにコメディ全振りでもない。モブキャラのギャップあふれるギャグパート、あるいは擬音や短縮語のワードセンスはまぎれもなく氏の作風ではあるけれども、そうした成分はこれまでの作品に比べると格段に薄く、あっても和香様、瑠々葉様、都にほぼ集約されていましたので他キャラの魅力が薄い。このせいでキャラが増えるわりに世界観が広がらない中盤があまりにもだれる。「Rewriteかな?」と本当に氏が全編執筆してるのか疑いたくなるレベル。


こうした状況は、まさしく「少女たちは荒野を目指す」と類似してます。田中ロミオ×松竜×タカヒロというチームで製作され、発売と同時にアニメ展開もされたこの作品は、正直に言って駄作でした。その理由を、自分はロミオ氏の良さが活かされなかったからだと考えていました。氏にも原因はあるだろうが、環境が悪かったのだと。
なぜならそれまでの作品とあまりにも作風が違っており、また世界観にも深みが全く感じられなかったから。その仮説が、「和香様」を経て確信へと変わりました。「しょこめざ」と「和香様」の間に刊行された「犬と魔法のファンタジー」は、傑作とは言えないまでも、まさしく「田中ロミオ」であったのも大きい。商業的理由もあるのでしょうけど。けれどもこの出来では正直悲しいです。「けものフレンズ」「ケムリクサ」をうみだしたたつき監督がその才能を存分に発揮する場を与えてもらえたように、氏にもただ氏が作りたいものを作る場所を与えていただきたいです本当に。僕が億万長者ならいくらでもだすんですけどね……
それがみなとそふとなのか、他の力のあるブランドなのかはわからないですが(個人的にはニトロかCLOCKUPあたりで出してくれると最高ですが)
ともあれいちロミオオタクのささやかな祈りとして、また面白い作品が世に出ることを祈っています。シミルボンももうちょっと更新してくれると……とか言ってるとうるさい黙れとなりそうなのでこの辺で。
ばたんのきゅー。